結婚披露宴ではさまざまな演出があります。その中でも最高のシャッターチャンスといえる演出がウェディングケーキ入刀ではないでしょうか。ウェディングケーキは本来、西洋由来のものであることはお分かりいただけると思います。しかし今や世界的にスタンダードな演出です。

ウェディングで登場するケーキは、普段はあまり見ることがないほどの大きさで、その形やデコレーションの種類、素材にはさまざまなものがあります。

そして、ウェディングケーキそのものだけでなく、新郎新婦が笑顔でケーキにナイフを入れるケーキ入刀の演出には、ふたりの個性を発揮できるポイントがたくさんあります。

結婚という特別な一日に、世界でただひとつのオリジナルケーキを用意する新郎新婦はたくさんいます。また、ケーキ入刀という演出そのものに憧れをお持ちの方は多いです。

他に、入刀後によく行われるイベントとしてケーキの食べさせ合いがあります。とても人気の演出のひとつとして、よく行われています。このような、ケーキの食べさせ合いにはさまざまなやり方、見せ方があります。

ウェディングケーキは見た目にもとても華やかです。しかし、それだけではなくウェディングケーキと、ケーキ入刀にはすべて意味があります。

ここからはウェディングケーキの起源や、さまざまな国のウェディングケーキ、そしてゲストの心に残る素敵な演出をみていきます。

ウェディングケーキの歴史は長い

ウェディングケーキの起源にはたくさんの説があります。そのひとつに次のような説があります。

「古代ギリシャの人びとは婚礼の際、主食である小麦を使ってビスケットを焼きました。そして、そのビスケットを子宝に恵まれるようにと花嫁の頭上からまいた」という話があります。

小麦はひとつの苗にたくさんの実を付けることから、五穀豊穣と子孫繁栄の象徴とされていました。当時の人びとは二人の未来の豊かな食生活と、子宝に恵まれますようにと願ったのです。

もうひとつの説は「欧米ではその昔、花嫁が家族と共に手作りのケーキを焼いて、お祝いにきてくれた人たちにふるまった」というお話です。手作りのケーキをふるまうことで「私はこんなに料理ができますので安心してください」と周囲にアピールしていました。

当時の砂糖はとても貴重なものであったことから、砂糖をたくさん使って焼いたケーキは繁栄と幸福のシンボルでした。

このような由来をみますと、はるか昔から人類の最大の関心ごとは「食べていくこと」「子に恵まれること」、つまり「生きること」「命を未来へつないでいくこと」が、とても大きな問題であったことがわかります。今を生きる私たちと同じことを願っていたことが、このような風習からわかります。

そしてその幸せの第一歩といえる婚礼の中に、今も変わらない本質が残っているのです。

いろんな形がある世界のウェディングケーキ

ケーキの味はもちろんのこと、見た目の美しさも楽しみのひとつです。ウェディングケーキに強いこだわりのある人はデザイン画や、ケーキの飾りを持ち込む場合もあります。ケーキの打ち合わせは、新郎新婦にとって楽しい作業のひとつです。

では、以下で主な国々のケーキの形をみていきましょう。

ウェディングケーキの発祥の地はイギリス

18世紀、イギリスのビクトリア女王の成婚のときに登場した3段重ねのシュガーケーキがウェディングケーキのはじまりといわれています(写真はイメージです)。今ではイギリスにおいて正式なウェディングケーキとなっています。

幸せの願いが天高く届きますようにと3段に積み上げられたウェディングケーキです。

いちばん下のベースケーキと呼ばれるケーキは、結婚披露パーティに来てくれたゲストと一緒に食べます。二段目のミドルケーキと呼ばれるケーキはパーティに来られなかった人たちへおすそ分けします。いちばん上のトップケーキは結婚1周年の記念日や、赤ちゃんが生まれて赤ちゃんの洗礼式のときにお祝いで食べるアニバーサリーケーキだそうです。

ドライフルーツを使い、固く焼いたケーキをシュガーペーストでコーティングした本格的なシュガーデコレーションは長期の保存が可能でした。時間がたつほど味がしみ込んでしっとりとしていきます。

幸せの象徴であるケーキを周りの人たちと分かち合っていたのです。現在、日本でも幸せのおすそ分けの風習から、披露宴のコース料理のデザートの際、ウェディングケーキがふるまわれることが多いです。

平たい形のアメリカ式ウェディングケーキ

一段の長方形のケーキで、メッセージやイラストが描かれたり、人形やフルーツで飾られたりした平たい形のケーキもあります。日本では生ケーキに入刀する際、このアメリカ式のケーキが登場することが多いです。

中にはケーキのデコレーションをパーティー前にゲストにおこなってもらう「ケーキデコレーション」の演出をする人がいます。「生クリームだけが塗られた真っ白いケーキ」と、「フルーツがたくさん盛られた皿」が別に用意され、ゲストが好きなところにフルーツの飾りつけをします。

ケーキデコレーションの演出の際にもこのような一段のケーキがよく見られます。

写真は花嫁の好きなキャラクターが描かれたケーキです。

ちなみに、アメリカのウェディングではケーキではなく、「ドーナツウォール」を結婚式で活用することもあります。壁一面にドーナツを並べてディスプレイしたものです。丸くてつなぎ目のないドーナツの形は永遠の愛をイメージします。

フランスのクロカンブッシュ

小さなシュークリームを円すい形に積み上げて、飴で貼りつけたフランスの伝統的なウェディングケーキがクロカンブッシュです。クロカンブッシュとは「ごつごつした木」という意味です。高さが高いほど、今後の結婚生活が豊かに繁栄するといわれています。

「シュー」はフランス語でキャベツを表します。ヨーロッパでは「キャベツ畑から赤ちゃんが生まれてくる」といわれており、子孫繁栄を願いキャベツに見立てたシューを高く積み上げます。

クロカンブッシュは本来、新郎新婦が木づちをもってたたき割り、ゲストにふるまうのですが、実際にはあまり行われていません。たたき割ると形がくずれてしまいますし、たたき割るという行為も少し荒々しいからです。そこで入刀の代わりに、いちばんトップに飾るシューを二人で載せるなどのセレモニーをすることがあります。

その後、ゲストに提供されるシューは食べるための専用のシュークリームが別に用意されます。

バウムクーヘン

日本では引き出物によく使われる一般的なお菓子です。「バウム」はドイツ語で「木」、「クーヘン」はドイツ語で「お菓子」の意味です。しかし、意外にも発祥の地ドイツでは日本ほどメジャーなお菓子ではないようです。

バウムクーヘンはその名の通り、切り口が木の年輪のような模様をしていることから、「成長」「長寿」「夫婦がいつまでも仲良く年月を重ねるように」と願いが込められた、とてもおめでたいお菓子です。

引き菓子としてだけでなく、披露宴の中でも一本の丸太の状態のバウムクーヘンが登場し、新郎新婦が入刀することがあります。一本ものの長いバウムクーヘンはとても人目をひくお菓子です。

日本のウェディングケーキ

現在、披露宴の中で中心的なセレモニーのひとつとなっているケーキ入刀です。では日本ではウェディングケーキはどのように進化してきたのかをみていきます。

イミテーションから生ケーキへ

日本では明治初期にウェディングケーキが作られたそうですが、たび重なる戦争によってあまり定着することはありませんでした。

結婚式が華やかになってきたのは昭和40年代です。当時、主流だったウェディングケーキは巨大なイミテーション、つまり作り物の大きなケーキで入刀が行われるようになりました。

ちなみに、イミテーションのケーキを最初に作ったのは、昭和の大スター石原裕次郎さんと、北原三枝さんの結婚式でした。それから、五木ひろしさんと和由布子さんの結婚式で登場したウェディングケーキの高さは11メートルもあったそうです。

また、バブル期にはドライアイスの煙を使った演出がされ、婚礼はとても派手になっていきました。

現在のウェディングケーキの主流は生ケーキですが、大きく天井の高いホテルでの大人数の披露宴などでは、今でもイミテーションのケーキが使われることがあります。

生ケーキのウェディングケーキでは、二人の個性あふれるオリジナルケーキを作ってくれる会場もあります。新郎新婦の思い出や、職業・趣味などを表現したウェディングケーキがたくさんあります。

たとえば、二人の思い出の海を表現したり、仕事をしている制服姿の新郎新婦の人形が乗っていたり、ゲストの注目を集めるアイテムのひとつです。

上の写真は野球好きのふたりのウェディングケーキですが、マジパンと呼ばれるアーモンドの粉末と、砂糖、卵白をこねて粘土状にしたもので、いろんなものが表現できます。

生ケーキはナイフの入刀後、切り分けてゲストにふるまうことができます。

ケーキの持ち込みは可能か

衛生上の問題から、婚礼会場は食べ物の持ち込みが原則禁止されています。しかし、プレゼント用のお菓子などは持ち込み可能です。また、食物アレルギーの重篤な方は専用の食品を持ち込むことができます。

基本的にウェディングケーキの持ち込みは歓迎されませんが、友人がパティシエをしている場合など特別に認められることがあります。

例えばある新婦の小学校からの友人は、子供のころからケーキ職人になることが夢でした。大人になり製菓の専門学校を卒業し、東京の有名な菓子店に就職しパティシエになりました。子供のころ新婦と「将来、結婚するときがきたら私がウェディングケーキを作る」と約束していたそうです。

そして披露宴当日、早朝から会場のキッチンでウェディングケーキの仕上げを行い、ケーキ入刀の場面でパティシエの友人が自らケーキを持って登場しました。そして友人の見守る中、新郎新婦がケーキ入刀を行い、幼なじみとの約束が実現したのです。

このようなストーリーがあれば、よほどのことでない限り会場側はケーキの持ち込みを断ることができません。ケーキに関わらず、持ち込みをしたいものを交渉するうえでストーリーを語ることは、感動を起こすうえでとても有効だといえます。

ウェディングケーキ入刀の動作

ウェディングケーキの入刀では、ケーキの前に二人が立ち、二人の前にはカメラをもったゲストが大勢集まります。そして一本のナイフを持った新郎新婦が司会の「ウェディングケーキ入刀です」の言葉でケーキにナイフを入れます。

新婦が両手でナイフを持ち、新郎が右手で上から手を添えます。そして新郎の左手は新婦の腰にまわされます。パートナーの手のぬくもりを感じながらの入刀です。

ウェディングケーキに入刀したら、ナイフはケーキに入れたままで、しばらく写真撮影をします。ぜひふたりで視線をそろえてカメラを持つ方に応えてください。ふたりが別々のゲストの方を見ていると、そっぽを向いているような残念な写真になってしまいます。

また、ときにはふたりで見つめ合うとゲストに素敵な写真を撮ってもらえると思います。ぜひ最高の笑顔を見せてください。

ケーキ入刀後の演出

ウェディングケーキの入刀後は生ケーキの場合、ケーキの食べさせ合いを披露する方がとても多いです。ケーキを食べさせ合うセレモニーも大変人気があります。恥ずかしいと思う方もいますが、特別な一日ですからぜひゲストに幸せいっぱいの姿をたくさん見せてください。

ファーストバイト

実施率のとても高い定番の見せ場がファーストバイトです。新郎新婦がおたがいに相手の口へ、ケーキを運びます。夫婦となって初めての食べ物としてウェディングケーキをみたて、ふたりで分かち合います。

これから喜びも悲しみも分け合って生きていくふたりのスタートにぴったりな演出です。

ちなみに司会者がファーストバイトの際、新郎から新婦へは「一生食べ物に困らせないよ」、新婦から新郎へは「一生あなたのために美味しい料理をつくります」という気持ちを込めて食べさせ合ってくださいと、アナウンスを入れることがあります。

しかし、いまは共働きが多く、料理が上手な新郎もいます。ファーストバイトに関わらず、男女の役割分担的な表現は、多くの方にあてはまりにくい時代になったといえます。

そのため、アナウンスの内容に関わらず、ふたりの仲のよさが自然にゲストの人たちに伝わることが、ファーストバイトでは重要です。

ラストバイト

お母様から、今日で独立し家庭をもつ新郎新婦へ、子育ての仕上げとしてケーキを口に運んでもらうセレモニーがらラストバイトです。生まれたときから長い間、子供の口に何度も食べ物を運んできたお母さんには、感慨深いセレモニーとなることでしょう。

たった一口のケーキを口に運ぶだけの単純なセレモニーですが、お母様の喜びの表情は、ゲストの心を温かい気持ちでいっぱいにします。お母様のためにも取り入れてみてはいかがでしょうか。

ほかにもある食べさせ合い

ファーストバイトやラストバイト以外にも、さまざまな食べさせ合いがあります。

特にお世話になった方をご指名して登場してもらい、お礼の気持ちでケーキを食べさせる「サンクスバイト」や当日誕生日の方への「お祝いバイト」、また両親やベテラン夫婦に登場してもらい、夫婦でケーキの食べさせ合いを披露してもらう「お手本バイト」などもあります。

ラッキードラジェ

披露宴の際、ラッキードラジェというゲームを取りいれることもできます。

デザートの際、ふるまわれるウェディングケーキの中に「ドラジェ」という、アーモンドに糖衣がけしたお菓子をしのばせておき、ドラジェが入っていた方に景品をプレゼントするというゲームを行うことができます。ドラジェというのは、たくさん実をつけるアーモンドを使った、子孫繁栄を象徴するおめでたいお菓子です。

ラッキープレート

ケーキ皿の裏にシールを張るなどして当たりのしるしを付けておき、ケーキを食べたあと全員にお皿の裏を見てもらうのがラッキープレートです。当たった方に景品をプレゼントしたり、インタビューをしたりします。

このように、新郎新婦のアイデアを活用できる演出がたくさんあります。ぜひふたりで何か取り入れてみてはいかがでしょうか。このようなゲーム的なものは基本的に景品代のみで行うことができますので、費用をあまりかけなくても印象的なことができます。

ケーキサーブ

新郎新婦みずから、ゲストへケーキのサービスをするというものがケーキサーブです。会場の片隅にデザートのコーナーを設け、そこでひとりひとりのゲストへ一人分ずつ取り分けたケーキを手渡しします。全員の方とコミュニケーションがとれるところが魅力です。

会場によってはコック服やメイドのエプロンなどを貸してくれるところもあります。

ウェディングケーキ以外のセレモニーにはどんなものがあるか

ウェディングケーキ入刀のセレモニーは必ず行わなければならないということはありません。ほかにもいろんな演出がありますので紹介します。

鏡開き

和装姿の新郎新婦がよく行うのが鏡開きです。日本酒の樽酒のうえに「かがみ」とよばれる丸い板でできたふたが乗っています。これを「よいしょ、よいしょ、よいしょ」の掛け声で、木槌でたたいて割ります。鏡開きをした日本酒で乾杯を行う場合もあります。

他には、巨大なおまんじゅうに入刀したり、お好み焼きに入刀したり、変わったものを取り入れてみるのも面白いです。私が見てきた中ではダルマに目を入れた方もいました。

ありふれたものではないものを求める方もいます。会場にはそこまで個性的なものは通常扱いがありませんので、こだわりたい方は自分で持ち込むことになります。

しかし、持ち込みは式場によっては認められないことも多いので、契約する前に確認をしておくことが大切です。後から持ち込みを希望するのはハードルが高いからです

そこで、ぜひ知っておいてもらいたいのが、フリーのウェディングプランナーという、特定の建物をもつ式場に勤務せず、個人で活動しているプランナーです。

大手企業を独立してフリーになった方が多いので、ウェディングプランナーとして能力の高い人が多いのが特徴です。ふたりの遊び心にとことん付き合ってくれる人も多いです。

式場に勤務しているウェディングプランナーはサラリーマンですので、どうしても取引先にある商品を提案します。

しかし、フリーのウェディングプランナーはどちらかというと、既存のサービスにしばられることに不自由さを感じて、もっと幅広く既成概念にとらわれない婚礼をもとめて、会社を独立している人が多いです。

そのため、フリーのウェディングプランナーはゼロベースで、二人と共に婚礼を作り上げることに喜びを感じます。自分のこだわりのためには労力を惜しまないタイプの方は、フリーのウェディングプランナーと波長が合うと思います。

こだわった結婚式・披露宴を開催したい場合、経験豊富で情熱をもったフリーのウェディングプランナーを選ぶという選択肢もあることを知っておくとよいでしょう。