結婚披露宴でよく見られるお祝いのスピーチは定番中の定番です。新郎新婦をよく知る人がどんなエピソードを披露してくれるのか、親族、ゲストみんなが注目しています。そんなスピーチは二人の婚礼をもっともオリジナリティあふれるものにしてくれます。
ただ、スピーチには2種類あります。それははっきりいうと「よいスピーチ」と「つまらないスピーチ」です。つまらないスピーチを聞かされるほどつらいことはありません。また、よいスピーチは一瞬で披露宴全体を温かく楽しいムードにする力があります。
そんな重要なスピーチを誰にお願いするのかを決めるのは、主催者である新郎新婦です。ここからはスピーチの人選を間違えないための考え方とお願いの仕方についてみていきます。
もくじ
結婚披露宴の主なスピーチは3つある
結婚披露宴で登場するスピーチは「主賓の祝辞」「乾杯の挨拶と発声」「友人代表スピーチ」の3つがあります。しかし、必ずしも行わなければならないものではありません。大切なことは自分たちにとって一番ベストな選択をすることです。
どのような人にスピーチをお願いするのがよいのかは、招待する人たちがどのような関係の人かによって変わってきます。さらに新郎新婦と両家の行いたい披露宴のイメージによっても変わります。
ここから3つのスピーチについて順番に紹介します。そこから、依頼するときに気を付けるべきことをみていきます。
・主賓の祝辞
主賓というのは結婚披露宴の招待客の中でいちばん主だった方、新郎新婦にとって一番目上にあたる方です。披露宴の開始早々にお祝いのスピーチをしてもらう方です。
ここでいうのは招待客(ゲスト)ですので親族の方は基本的に含まれません。例外でたとえば、遠縁の親族が経営する会社に勤めている場合などは、親族でありながら勤務先の社長(=主賓)ということもあります。
主賓というのは一般的には会社員の場合、会社の社長や上司にあたる方です。自営業の場合は重きを置く取引先の代表の方や、独立前にお世話になった仕事関係の方などです。もしくは親御さんがお世話になっている地域の有力者などの場合もあります。現職場の人を招待しない場合は元勤務先の上司を主賓にすることもよくあることです。
他には、学生時代の恩師の先生や、習い事の先生、新郎新婦を紹介した人などさまざまです。
基本的に仕事関係の招待客の中でもっとも肩書きが上の方、年長者の方になります。大きい会社ですと係長やリーダーのような肩書きの人も多いです。
主賓の方には披露宴の食事がスタートする前、つまり乾杯の前にスピーチをいただくのが常識です。食事をしながらスピーチを聞くのは失礼にあたるからです。
主賓は新郎側を代表する主賓と、新婦側の主賓とそれぞれ立てることがあります。また、新郎側新婦側すべての招待客を代表して1名の主賓を立てる場合もあります。
主賓が1名の場合、基本的には新郎側の方を選ぶ方が無難です。しかし新郎側が会社関係を誰も招待せず、新婦側の勤務先の社長が招待されている場合もありますので必ずしも新郎側でなければならないというわけではありません。
主賓がもし1名の場合は、その方にスピーチの依頼をする際に、両家のゲストを代表してのスピーチであることを伝えるようにしましょう。そのように伝えておくことで新郎側もしくは新婦側の両家どちらかに偏りすぎないスピーチをしようと気遣いしてもらえる可能性が高いからです。
・乾杯の挨拶
食事が始まる直前に、お祝いのお酒の入ったグラスを掲げて全員で「乾杯」をします。その乾杯の音頭をとる人の挨拶です。お祝いのスピーチをいただいた後、乾杯へと進みます。
乾杯の発声者を会社関係の人の中から選ぶ場合は、主賓の方に続いて肩書きの高い方を選ぶのが基本です。
会社関係の目上の方を複数招待する場合には基本があります。それは、一番肩書が上の方に主賓祝辞を依頼し、二番目に肩書が上の方に乾杯の挨拶をお願いすることです。
ただ、依頼をしたものの挨拶に立つ上司が人前に立つことが苦手な場合もあります。そのようなとき本人から断られた場合は、別の方に代えても大丈夫です。ただ最初は肩書の順番に従って、肩書の上の方からスピーチの依頼をしましょう。
なぜなら、日本の組織にはまだまだ序列のような順序がはっきりとあります。そのため、招待するのであれば仲のよさや頼みやすさよりも序列を大切に考えるべきです。
面倒くさい、堅苦しいと感じるかもしれませんが、一般常識と考えて無難に序列は守っておきましょう。上司を複数招待するということは、その方々を披露宴のゲストの中心に据えることが当然のおもてなしとなるからです。
ただ、両家の考えで堅苦しい雰囲気をさけたいという理由で、上司のスピーチ自体を省略することはよくあることです。もしくは会社関係は同僚だけしか招待しないという選択もあります。
・友人代表スピーチ
ここまでみてきたような主賓や乾杯の挨拶の方と違い、友人のスピーチの人選はもっと自由です。あなたの友人たちですから、あなたがその中の誰を友人代表として選んでも問題はありません。
友人代表のスピーチで重要なことは、自分が心から親友だと思える友人を選ぶことです。中には人前で上手にしゃべって周りを盛り上げるのが得意な友人がいるかもしれません。それでもあなたの心の友情度数のもっとも高い人を選ぶべきです。
真の心友なら、どんなに人前で話をすることが苦手なタイプの人でも一生懸命スピーチをしてくれます。そして仲が良い分あなたの良いところ、悪いところをたくさん知っています。また、思い出話やエピソードも豊富なはずです。
一方、おしゃべり上手だからという理由で選んでしまうと、頼まれた方も「なぜ私なのだろう。適当に盛り上げてほしいということかな」と感じてしまいます。そのような気持ちで引き受けたスピーチは、たとえ流暢な話しぶりであっても印象という面では物足りないものになりやすいです。
ゲストや親族が聞きたいスピーチは上手なしゃべりではありません。新郎新婦の人柄に触れることができたり、新郎新婦と友人の深いつながりに感動したいのです。
他には、二人の友人が一組としてスピーチをすることもあります。一人に決めきれないほど、どちらとも仲がよいのかもしれません。どちらかを選ぶことが心苦しい場合もあるでしょう。しかし、二人一組のスピーチにはデメリットがあります。
具体的には二人の友人がお互いに依存し合い、積極性に欠けたスピーチになりやすいことです。例えば、二人の友人がマイクの前に登場して、二人のうちどちらもなかなか話を始めようとせず照れ笑いをしているような状態です。話し始めるのを譲り合っているような、無言の時間が流れることがあります。
これは特に女性の友人に多いです。本人の心理的には一人より二人の方が楽ですが、はにかんでいる時間が長くなると、聞く方にとっては集中力が散漫になりやすいです。
どんなにおとなしい感じの友人であっても一人で何とかしないといけない状況になると、意外な集中力を発揮する人がいるものです。
以上の理由から、友人代表スピーチの人選のコツは「能力よりも友情度」「できれば一人にお願いすること」です。
間違えると怖い「順番」と「名前」
主賓や乾杯の方に対することだけではなく、披露宴の席の順番や紹介の順番、名前というのは非常に大切になります。なぜかというと、人は多くの人の前で自分を軽んじられたと「感じる」と激しい怒りを感じる人が多いからです。
実際に軽く見ているかという事実ではなく、本人が軽く扱われたと感じてしまうことが問題です。あくまでも相手の心情を思いやることが大切です。社会的地位の高い方がすべてプライドが高いというわけではないにしても、気を付けておくに越したことはありません。
相手に上手に気持ちよくお願いごとをすることで、よりいっそうあなたが可愛がられ、引き立てられる存在になります。一方で、気づかないうちに相手を不快にさせてしまい、信頼を失ってしまうことがあります。婚礼の怖いところです。
披露宴の席次表や席札の名前に誤りがあると、表面では何もいわれなくても心の中でいつまでも穏やかでない感情が残ることがあります。どんな人にとっても自分の名前は大切なものだからです。
よく席次表の隅の方に小さい字で「万が一お名前に誤りがございましたら、慶事につき何卒ご容赦願います」と印刷されています。このように、もしものときの謝罪文を入れていたとしても間違いのないよう注意をはらいましょう。
名前を一文字間違うだけで、披露宴の他の部分がどんなに素晴らしいものでもその人にとっては不愉快な一日として刻まれてしまいます。しかも、その不快な気持ちは教えてもらえないことが多いです。表面ではみんな大人の対応をしなければと我慢していわないからです。
本人の序列や、その人の分身である名前の取り扱いには細心の注意を払いましょう。日頃の感謝を伝えたくてお招きするのですから、その気持ちがきちんと伝わるように準備を進めることが大切です。
席順だけでなく、たくさんの仲間に余興の披露をしてもらう際も、名前の紹介の順番は意識しましょう。先輩格の方や年長者から紹介する、もしくは名前のあいうえお順に紹介するという方法もあります。
仲間レベルであればそこまで気を使わなくても大丈夫かもしれませんが、念のために細かく考えておくほうが無難です。
本来、招待する人全員に対して、等しく感謝の気持ちをもっているというのは大前提です。そこに上下はありません。しかし、実際には順番や名前はデリケートな事柄ですので慎重に考えましょう。
結婚披露宴のスピーチの依頼の仕方
ここからは実際のスピーチの依頼の仕方の話です。同じことを頼まれても、頼んでくる人の頼み方によって気分よく引き受けられたり、逆に気分が悪くなったりするものです。
人は感情で動いたり、物事を決めたりします。依頼内容は二の次です。たかが頼み方されど頼み方です。
では具体的にどのような気遣いをするとよいのでしょうか。気持ちよく引き受けてもらえるかどうかということは、当日の披露宴の雰囲気を左右する重要な部分です。
スピーチは突然頼まれてできるものではありません。準備が必要です。自分に置き換えて考えてみるとすぐわかりそうなものですが、依頼者にまわったときは鈍感になりがちですので注意しましょう。
遅くてもスピーチは2か月前までに頼む
スピーチの依頼をするときは、まず直接会って話すか電話をしましょう。「2か月前まで」というと招待状の発送の前になります。事前に話しておき、後日招待状を送るときにメッセージカードなどを同封して改めて正式に「よろしくお願いいたします」と依頼します。
主賓の方や目上の方などへの依頼は、招待状とは別に手紙で正式にお願いする方がより丁寧です。ごくまれに当日になって「スピーチなんて依頼されていない」ということがあります。いくらスピーチ慣れした人であっても、どうせスピーチするならちゃんと準備をしたいと思うものです。
こうした行き違いが起こらないようにするために、事前に話した後に文面で正式依頼という二段階の依頼をしましょう。メールなどではなく極力手紙にしましょう。
このようにきちんと丁寧すぎるほどの依頼をすると、相手は何となくそれなりの格式ある披露宴を行うのだろうと思います。そして、それに見合ったスピーチをしなければと思います。ご祝儀の額面も変わってくるかもしれません。
またスピーチの方の持ち時間も伝えておきましょう。一般的には3~5分くらいです。食事が始まる前の長すぎるスピーチは多くの人のためになりません。大抵の良識ある人は大丈夫だと思いますが、あなたから見て話が長そうな人には短い目に「3分ほどでスピーチをしてください」とお願いしておくとよいでしょう。
ほかには、スピーチを頼まれる人が気になりそうなことは先回りして伝えるようにしましょう。例えば、招待客の顔ぶれや年齢、他にどんな人がスピーチをするのかなどを伝えておくと参考になりやすいです。このような気遣いをみせる新郎新婦は好印象を与えられます。
また、あなたが触れてほしくない話題やエピソードなどがあれば事前にお願いしておきましょう。中には、ざっくばらんに新郎の前妻の話や離婚話などする人もいます。このような話をしたうえでエールを送りたいという気持ちはわかりますが、あなたが話してほしくないのであれば率直にお願いしておいてかまいません。
車代・謝礼について
スピーチは準備も必要な、とても負担が大きいお願いです。新郎新婦の気持ち次第ですが、スピーチしてくれた方への車代や謝礼を用意する人もいます。このときは新札をポチ袋に入れて渡します。当日の新郎新婦はとても忙しいので親御さんから披露宴中、もしくは披露宴後に渡してもらうとよいでしょう。
金額は3,000~10,000円くらいが一般的です。スピーチをしてくれる人たちはお金のためにしているのではありません。それでもこのような配慮を受けると新郎新婦からの感謝の気持ちがより伝わり、一生懸命スピーチしてよかったなと心から思ってもらえます。
全員が気持ちよく過ごせる結婚披露宴にすることが大切
ここまでスピーチを依頼する人の選び方と、お願いの方法について紹介してきました。スピーチをする人も、聞く人も、依頼したあなたもすべてがハッピーな披露宴ができれば大成功です。
先ほど「スピーチは負担の大きいこと」と紹介しましたが、それと同時にとても名誉なことでもあるのです。あなたたちの一生の記念となる披露宴の舞台で重要な役割を担うのです。
だからこそ、誰かの人生の大イベントで重要視されることを心から光栄に感じてもらえるような依頼の仕方が大切です。
こうしたことを意識して、結婚披露宴では将来を見据えてスピーチをお願いしてください。