人前結婚式は宗教に関わらない挙式スタイルです。人前式(じんぜんしき・ひとまえしき)とも呼ばれます。

新郎新婦が、結婚の立会人である参列者の前で夫婦の誓いを交わします。自分たちをよく知る人たちに結婚の証人となってもらう結婚式です。

昭和初期まで日本でおこなわれていた、自宅で結婚式を挙げる「祝言」が人前結婚式のルーツといわれています。

人前結婚式を選ぶ主な理由は「宗教儀式がピンとこない」「カジュアルでオリジナリティあふれる挙式を望む人」「両家の宗教が違っている場合」などさまざまです。

そのためのヒントになるため、どのような流れやアイデアで人前結婚式を行えばよいのかについて確認していきます。

自由度の高さが魅力の人前結婚式

人前結婚式のもっとも大きな特徴は「決まった形式がない」というところです。また、おこなう場所も自由です。

チャペルや披露宴会場内だけでなく、公園、水族館、美術館、ホテルのエントランス、船の上、テーマパーク、野球場、サッカースタジアム、自宅、海中、観覧車の中など、どこでもおこなうことが可能です。

めずらしい結婚式の場所としては、エベレスト山頂で結婚式を挙げたカップルがいます。2005年5月にネパールの登山家の男女が揃って山頂に登り、二人でネパール式の儀式をおこない記念写真を撮影したそうです。

世界的にもウェディングのスタイルは多様化しています。日本の人前結婚式のように宗教の規律にとらわれない儀式では、ユニークな場所での式や演出が次々に登場しています。

一生一度の結婚式ですから、生涯の記念になるような自分たちらしい式がますます求められる時代になるでしょう。近い将来、宇宙空間での結婚式も実現しそうです。

ただ、人前結婚式のスタイルが自由といっても、真剣に一生を誓いあうセレモニーであることを念頭においておくことが大切です。カジュアルな演出を部分的に取り入れたとしても、厳粛さを欠いた挙式では問題です。親族や年配の方々に参列してもらっても安心してもらえるような式を考えましょう。

「オリジナリティがありユニークであること」と「軽々しくなりすぎること」は違います。ここからは具体例を見ながら、オリジナリティを組み込むポイントについてみていきます。

人前結婚式のプログラムの一例

決まりのない人前結婚式ですが、立会人である列席者の前で誓いを立てるセレモニーであるため基本的なパターンがあります。

アレンジは自在にできますが、比較的多いパターンを紹介します。

①新郎新婦の入場

列席者のいる挙式場所に、新郎新婦が入ってきます。二人で一緒に入場するのもよいですし、キリスト式のように新郎が一人で入場した後、新婦が父のエスコートで入場するが非常に多いです。

②開式

人前結婚式の始まりに、司会者が「人前結婚式とはどのような結婚式」であるのかを列席者に説明をすることが多いです。人気のある挙式といっても、列席者の中にはなじみのない人もいるからです。

列席者ひとりひとりが二人の結婚の立会人となりますので、全員に立会人としての自覚をしてもらえるようにすることが大切です。

③誓いの言葉

新郎新婦が列席者の前で誓います。そのため、皆さんに夫婦と認めてもらえるような誓いを立てましょう。

・誓いの言葉文例1

私たちは今まで二人を支えてくださった皆さまの前で結婚の宣言ができることに感謝の気持ちでいっぱいです。

皆さまに承認していただけた喜びを生涯忘れずに安心して見守っていただけるような健やかで明るい家庭を築くために二人で歩んでいくことをここに誓います

・誓いの言葉文例2

本日は私たちの結婚式にご参列いただきまして誠にありがとうございます

広いこの世界で二人が出会えたことそして皆さまに見守られながら結婚の宣言ができることに幸せを感じています

これからは二人で力を合わせながら明るい家庭を築くことを誓います

・誓いの言葉文例3

私たち二人は今皆さまの前で夫婦となりここに新しい出発を宣言いたします

今日より心をひとつにして助け合い楽しいことも苦しいことも分かち合い

あと数か月で誕生する子供のためにもいつまでも仲良く明るい家庭を築くことを誓います

・誓いの言葉文例4

私たち二人は皆さまの前で結婚式を挙げることができ感謝と喜びでいっぱいです

ここに結婚の誓いをいたします

一、お互いの両親を大切にします

一、相手を思いやる気持ちを忘れません

一、笑顔のたえない明るく楽しい家庭を築きます

一、ケンカしてもその日のうちに仲直りをします

一、結婚記念日と誕生日には美味しいものを食べにいきます

今日の誓いを心に刻み夫婦として支え合い感謝の心を忘れずに生涯力を合わせていくことをここに誓います

・誓いの言葉文例5

私たちは皆さまの前で結婚式を挙げることができとても幸せです

これからは心を一つにしてお互いに助け合い楽しいときも苦しいときも分かち合い共に生きていくことをここに誓います

私(夫の名前)は3つの約束をします

1、家事手伝いを率先してやります

2、身だしなみを整え、身なりをきれいにします

3、釣りにいく回数を減らします

私(妻の名前)は3つの約束をします

1、苦手な料理を頑張りおいしいものを作ります

2、休みの日も化粧をし自分も部屋もきれいにします

3、彼の趣味を理解しうるさく言いません

以上3つの約束を必ず実行します

④指輪の交換

新郎新婦が結婚指輪の交換をします。

 

⑤ベールアップ&誓いのKISS

ドレスの場合、新婦の顔の前にかかるベールを新郎が上げます。顔が見えたところで誓いのキスをします。

⑥結婚証明書に署名

新郎新婦が結婚証明書に名前をサインします。新郎新婦だけでなく、立会人の代表者に出てきてもらい承認署名をしてもらうこともあります。

立会人代表の署名をしてもらう人は誰でもかまいません。両家のお父様や、兄弟姉妹、または友人や上司夫妻などさまざまです。二人を引き合わせたキューピッドの人に立会人代表をお願いする人もいます。

⑦立会人による承認

二人を夫婦と認めるためにおこないます。拍手で承認したり、鈴を鳴らして承認したり「おめでとうございます」の唱和をしたり、形は何でもかまいません。

⑧結婚の成立宣言

司会者、もしくは立会人代表が「二人の結婚が皆さまの承認をもって成立しました」と結婚成立の宣言をします。

⑨閉式・新郎新婦退場

参列者の拍手やフラワーシャワーのお祝いの中、新郎新婦が退場し、挙式は終了です。

人前結婚式の演出とアイデア

人前結婚式で活用できるアイデアを紹介します。これから紹介するのはいずれも実際の新郎新婦がおこなったものばかりです。

比較的多くおこなわれているものから、非常にマニアックなものまでたくさん掲載したいと思います。

演出のアイデアの中でイメージに合うもの、心惹かれるものがあればそのまま活用してもよいです。また、二つのアイデアを組み合わせてみたり、アレンジを加えてみたりしてもよいでしょう。

珍しいパターンの式にする人は特に、挙式会場に対して念入りに説明をしましょう。会場側が慣れていないような斬新なことは、ミスが起こりやすいからです。

ブーケ・ブートニアセレモニー

「ブーケ」というのは、花嫁が手に持っている花束です。そして「ブートニア」は花婿が胸に飾っている花です。このブーケと、ブートニアは必ず同じ花でコーディネートされています。

欧米では昔から、男性が女性にプロポーズをするとき、野原で摘んだ花で花束をつくり、プロポーズの言葉と共に贈りました。

花を受け取った女性は、その思いを受け入れる返事として花束の中の一輪を抜き取り、男性の胸元に花を飾ったという話が元になっています。

この説を挙式に応用した演出が、「ブーケセレモニー」「ブーケプロポーズ」といわれるセレモニーです。

実際におこなう際は、はじめに新郎が一人で入場します。そしてあらかじめ参列者に一輪の花を持ってもらい、一人ずつから花を受け取りながら進みます。

その花を花束にするためリボンをかけます。ブーケが完成すると、最後にブートニアとしてお返しするための一輪をブーケに忍ばせます。

実際に花束の中から一輪抜き取ると、茎が長すぎて新郎の胸ポケットに入らないため、式では茎を短くカットしたブートニア用の花が用意されています。

そして、新婦が入場した際に新郎からブーケが贈られます。このとき「僕と結婚してください」とあらためて公開でプロポーズされる人もいます。

また「これからいつまでも仲の良い夫婦でいましょう」など、気持ちを伝える人もいます。

そして、新婦はブーケの中の茎の短い一輪を新郎の胸に飾り、プロポーズ成立となります。

式の始まりに、このようなセレモニーを取り入れる人もいます。参列者にも協力してもらえるので、多くの人の記憶にも残りやすいセレモニーです。

ベールダウンセレモニー

新婦のベールを新婦の母が下ろし、花嫁姿を完成させるのがベールダウンセレモニーです。とても実施率の高いセレモニーです。涙ぐむお母さんの姿に感動が広がります。

ベールダウンは挙式会場の中で列席者の見守る中、おこなうのもよいですし、控室などで母と娘二人きりでおこなうのもよいです。

和装の場合、ベールダウンセレモニーはできませんが、母から新婦へかんざしを挿してもらったり、唇に紅を引いてもらったりすることで花嫁姿を完成させてもらうこともできます。

子供の参加で微笑ましい挙式に

また、新郎の前を「フラワーガール」の女の子が花びらを撒きながら先導することもあります。他にも「happy wedding」などと書かれた旗を持って男の子が先導する「フラッグボーイ」や、新婦の後ろでドレスの裾を持ちながら一緒に入場する「トレーンガール」など、子供が登場する場面を取りいれることができます。

それから二人の指輪を運ぶ「リングガール」や「リングボーイ」に登場してもらうのも人気です。

指輪を運ぶのは子供だけでなく、大人の人でもかまいません。二人の指輪を作った友人が自ら運んできて、デザインのポイントを説明してもらうというのも実際にありました。

挙式でお手伝いしてもらう子供は、友人の子供でも、親族の子供でも構いません。子供の親御さんにとっても嬉しいお願いになりますし、子供が登場するだけで自然と温かみのある結婚式になります。

ただ、子供さんにお手伝いをお願いする際に注意しておきたいことがあります。挙式の前には大抵の場合、リハーサルがあります。リハーサルのためには少し早めに会場に来てもらう必要があります。そのため、リハーサルに参加してもらえる状況かどうかを子供の親御さんに確認しましょう。

遠方から来る人や、お手伝いしてもらう子供の下に乳幼児がいる人、妊娠中の人などは負担が大きいので、頼んでもよいかどうか配慮しながらお願いしましょう。

人間関係がそれなりに深ければ大抵は喜んでやってもらえると思います。親御さんは挙式で役目のある子供におしゃれな服を着せて参加してくれることが多いので、後日写真を贈って改めてお礼を伝えることを忘れないようにしてください。

婚姻届に署名

結婚式の中で、役所に届ける「婚姻届」に署名することもできます。婚姻届は見た目に地味ではありますが、やはりこれを提出することで法的に夫婦となるものですから重みがあります。

婚姻届をセレモニーで使う場合、あらかじめ二人の名前以外の部分を先に記入しておきます。そして、本番で新郎新婦の名前を列席者の前で署名し、後日役所に提出します。

このときの注意点として「婚姻届」は記載事項に不備があると、役所で受理されません。そのため、婚姻届の用紙を数枚もらっておき、名前以外の部分を一度完成させたものを役所の窓口で確認をしてもらいます。

こうして準備したものを挙式で使用することで、セレモニーのなかで完成させた婚姻届で安心して役所の手続きをおこなうことができます。

失敗を防ぐために、起こり得る事態を想定して準備を進めましょう。

立会人代表の承認手形

新郎新婦に子供がいる場合、お子さんに立会人代表をつとめてもらうこともできます。字が書けないくらい小さいお子さんの場合、承認署名の代わりに承認手形はいかがでしょうか。

その場で手形を押すのは手が汚れますし、きれいに押せない可能性もあります。

そのため、事前に手形を押しておいて、本番の挙式では押すふりだけしてもらうとスムーズです。子連れの結婚式ならではのセレモニーです。

結婚の承認のバルーンリリース

「二人の結婚を認めます」という承認を表すためにバルーンリリースを取りいれると華やかです。屋外挙式ならではの演出です。

担任の先生による恋人卒業証書授与

新郎新婦が学校の同級生の場合、当時の担任の先生に立会人代表をつとめてもらうのはいかがでしょうか。実際に先生から「恋人卒業証書」を読み上げてもらったり「結婚の成立宣言」をしてもらったり、同級生カップルならではの儀式ができます。

ソフトボール好きの夫婦

社会人ソフトボールチームで結ばれた新郎新婦なら、選手宣誓風の誓いの言葉を読み上げたり、ソフトボールを結婚証明書に見立て、ボールに署名したりできます。また、指輪とグローブを交換したり、誓いのキャッチボールで新婦が投げたボールを新郎にキャッチしてもらったりいろんなアイデアが活用できそうです。

二人の人柄がにじみ出る人前結婚式

以上のように人前結婚式には無限のパターンが考えられます。何でもありだからこそ、本来の儀式の意味合いも考えながら二人らしいものを作ってください。

二人の喜びの気持ちが挙式のこだわりに表れることで、参列者は他の誰でもない「あなたたち二人の唯一の結婚式に立ち合えた」という特別な1日を過ごすことができるのです。

二人の気持ちが皆さまに届くよう、ぜひアイデアを膨らませてみてください。